堤中納言物語
- 作者: 山岸徳平
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1963/12
- メディア: 文庫
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当時の女子の風習である、眉を抜いたり、お歯黒もつけない、年頃の女性としての身だしなみもせず、朝夕、毛虫などばかりを好んで飼う異常な性格の姫君を描く一篇。
あらすじには「異常な性格」とありますが、この姫君は至極マトモな事を言っています。
世間の人々が、花だの蝶だのと、もてはやし愛するのは、いかにも無意味なばからしいことだ。人間というものは、誠実の心があって、物の本体を追求しているのが、いかにも心だてが趣もあり、興味もある。
素晴らしいですね。しかし、こういう事ばっかり言っていると、親とか周囲の人に怒られるわけです。以下、親のセリフ。
あなたのように風変わりでいらっしゃるのは、外聞の悪い事ですよ。世の人々は容姿の美しいものを好むものです。それなのに、あなたが「見るからに気味の悪そうな毛虫をおもしろがっている」などと世間の人が聞いたとしたら、じつにみっともなくけしからんことです。
それに対してこの姫君は、
世間の風評など、私はなにも困りも苦しみもしません。どんなことでも、その根源を尋ねて、そこから末をみてこそ、物事には意味があるのです。それを「気味悪い毛虫をおもしろがっている」などというのは、まったく幼稚な愚かしい事です。この毛虫が蝶になるのですよ。
いやあ、こんな人がいたら惚れますね。この後、この姫君を一目みようとあの手この手を使った男が寄ってくるんですが、興味のある人は本屋で立ち読みでもして下さい。15ページくらいなのですぐ読めます。
この虫愛でる姫君は、風の谷のナウシカのモデルになった人として有名です。ナウシカも、虫愛づる姫君と同様に、目玉のたくさんついてる不気味な虫や腐った森の草木を愛でる変人なんですが、世間の評価は何故か「自然との共存を訴えるナウシカ」と、妙に美化されてるんですよね。なんだかなー、、、まぁいいけど。自分は虫愛づる姫君の話も、ナウシカも好きなので。
さて、、、いきなり話変わって恐縮ですが、私は周囲からパソコンオタクな人と思われているんです。ま、それはその通りなので別にいいんですけど。
で、パソコンオタクな私は、若かりし頃、アングラなサイトから集めたウイルスをたくさん自宅のPCに保存してたんですよ。これは別にウイルスをばらまいてやろうとか考えていたわけでなくて、純粋に技術的興味からウイルス収集に励んでいたんですね。この点では、全く虫愛づる姫君と同じわけです。違うと突っ込まれそうな気がしないでもないけど、全く同じです。
にもかかわらず、その当時、職場のマシンでちょっとOSが壊れたりすると、上司から「ケンキチ君!!ウイルス持ってきただろ!!」とか酷い言われようだったんですよ。会社にウイルスなんかもってかねーよ!!
そんな上司でも、ナウシカはいい映画だ、とか言うんです。僕=虫愛でる姫君=ナウシカ、なのに。けど僕はウイルス野郎扱い。まったく世の中間違ってる。