アンソニー幻影論 (後編)
キャンディーキャンディーは少女漫画の王道と言っていい作品でしょうか。アンソニーの表面的な特徴は、爽やかで優しそうでお坊ちゃん風といった感じです。作中では、丘の上の王子様、とも呼ばれていました。
ヨン様人気を支えていると言われる世の中年女性の多くは、恐らく幼少の頃に"キャンディーはアンソニー以外の男にアンソニーの幻影を見てしまう"という経験をこのような作品を通して追体験をしており、この為、彼女達は、アンソニーという記号化されたイメージに合致する現実の人物にアンソニーの幻影を見てしまい、無意識のうちに「様」を付けるのです。
また、少女漫画や恋愛作品などをたくさん読んでいる女性は、「様」と呼ぶに相応しいさまざまな人物パターンの記号化が多くなされているはずです。
この作業を繰り返すことにより、ベッカムや杉良太郎も、"ベッカム様"や"杉様"になりえます。これらは、男性でいうところの「萌え」という概念を構築する作業に似ています。「萌え」についての説明は省きますが、その道のマニアにしかわからない記号化された概念に対して反応する、という点で「萌え」も「何々様」も全く同じです。
すなわち、「小学生の妹萌え〜」と「ヨン様、ベッカム様〜」は同類なのです。激しく反論されそうな気がしますが同じです。間違いないです。なんだかヨン様にムカついてる理由が分かった気がします。
これらに対してムカついたりキモイと思うのは、彼(彼女)らの記号化された概念を共有できていない疎外感から来るもので、それは当然です。しかし、一度共有できてしまえばそういった感情は消えるでしょう。
いくら疎外感を感じたとしても、共有なんてしたくないですけどね。