富士通成果主義の崩壊
- 作者: 城繁幸
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/07/23
- メディア: 単行本
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富士通成果主義の特徴
をざっとまとめると、
- 成果主義の中核は目標管理制度
これは簡単に言うと、従業員に目標を立てさせ、それをどの程度達成できたかで評価するというもの。その制度に加えて、裁量労働制を導入し、給与体系が労働時間に対する対価から、成果に対する対価に代わった。
- 人事面では、従来ほとんど採らなかった中途採用を増やす、同業他社から従業員を引き抜く
ちなみに、従業員は裁量労働制と通常勤務のどちらで働くかは自由に選択できたらしい。ここまでは、一見素晴らしい制度改革に思える。が、その結果。。。
成果主義の崩壊
- 人件費2割アップ
もともとやる気のある人間は裁量労働制を選択し、年俸があがる。やる気のない人間は通常勤務を選択し、残業代で稼ぐ。
- 度重なるトラブル
古い製品のサポートをしたり、品質管理系部署は、数値的な目標が立てにくい。
無理に目標を立てそれを評価されることになったら、以前のような、どんな小さな障害でも見つけ出す、という心意気はなくなった。
- 目標達成基準が相対評価で、さらに世代別に枠がある。
優秀な人材が多くて競争が激しい部署の従業員、(いわゆるエリート新入社員)は高評価を受けづらく、逆に、コスト部門といわれる事業部で、他に同期のいない事務系社員が、評価分布の影響を受けないため高評価を貰えてしまう。
- 裁量労働制と通常勤務
どちらで働くかは、建前上は自由に選択できた。しかし、残業時間が多いと裁量労働制の適用を強要され、逆に、出社時間の遅さを理由に通常勤務に戻されたりする。
- 技術系の部署
自分の目標だけに固執しチームの不和が起こる。
- 目標の評価
残業時間と年次休暇と勤怠の数字を見て査定。さらに幹部候補生は他従業員と同じ成果でも高評価。
- 公表されない管理職の目標と成果。
笑ったのは富士通内部ではいまだにオアシス(富士通のワープロね)を使っているということ。富士通の管理職の9割がオアシスを使っている。新入社員は、社内文書作成のためだけにオアシスを覚えさせらるそうだ。
- 愛社精神に溢れていた社員が雑誌やネット上で激しく自社を批判中傷するようになった。
そりゃするよね
- 離職率の増加
そりゃやめるよね
改善策
で、改善策として、著者は
- 管理職の削減
- 降級制度
- 管理職と一般の従業員を上下関係で捉えるのをやめ、横並びでフラットな関係にする
とまとめています。この本では、富士通批判が大半で改善策について言及してる部分が少ないんだよね。そういう本である or 改善しようがない、のかもしれませんが。。。というか、降級制度なんて、年功序列な管理職達にとっては自分自身をリストラするようなもので、そんな意見通りっこない、と思いました。通れば素晴らしいですが。
富士通の場合、制度改革に伴う痛みを主に受けたのが30代あたりの一番働ける世代ってことだったんでしょうな。。。(ちなみに著者は1973生まれの東大法学部卒です。)